裸足になろう

 中国人は人前で靴を脱ぎません。室内でも土足で生活します。ですから、楊名時先生が裸足での稽古スタイルを作ったことも注目すべきことです。

「はきものは、戸外ならかかとの低い、底の柔らかい靴で、できれば素足がよいのです。室内ではもちろん素足で、寒い日などソックスをはいてもかまいません。

 足の指は、親指は大脳や脳下垂体、第二、第三指は目、第四、第五指は耳に、足の裏の内側が胃腸系、外側は肝臓や腎臓につながっています。足の裏全体に副交感神経が密になっているので、爪先で立つことで刺激を与え自律神経が安定します。

 今の子はすぐに転んで骨を折るという。これは恐らく足のふんばりがきかないためで、足の指が冬眠している。ひどい状態になっている。

『脚気になったら朝露を裸足で踏め』ということわざがあります。足を靴から解放して裸足になり、爪先を動かして鍛えることで、冬眠状態から解放しましょう」

──『太極の心 ─楊家八段錦・大極拳による深長呼吸法の神髄』より、抜粋構成:長谷川


 土踏まずにある「足心」から5メートルもあるような根を生やし大地の気を吸い上げて、また静かに戻していく。足の裏全体で大地をつかむようにしっかりと立つ。その感触をより自覚するためにも、気持ちのよい裸足で、お稽古をいたしましょう。

『太極拳の心』楊名時著・海竜社・1980年。
初期の出版物で、後の本が薄く感じられるほどの濃厚名著。




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