天の時 地の利 人の和


 長崎県支部設立記念イベントがお陰様で盛会に終わることができました。

 私が吉祥寺で太極拳を始めた'80年ごろは、楊名時先生もしばしば教室をのぞきにこられ、お稽古の後は先生を囲んで近くのお店で和気藹々とお昼をいただいたりしていました。今では夢のような話です。そのころの雰囲気を教室のみんなにも味わってほしい、楊先生と長崎で一緒にお稽古したい、その一心で東京のお宅までお願いに上がったのは3月のことでした。
 そんなわがままを先生は快く引き受けて下さいました。師範科の、渋谷麻紗師範、今井治師範、小松崎貴枝師範、土井てる子師範、市園禮子師範、佐藤伸子師範、さらに思いがけず帯津良一先生まで来て下さることになり、小さな支部には過分なことと、気持ちを引き締めながら皆で準備をしてきました。

 当日は天候にも恵まれ、残暑厳しく汗だくになりながら本番を迎えました。先生方が崇福寺に到着された時は、いよいよ実現したんだなと、目眩がするような思いでした。演舞会が始まり、審査も無事終了。後半の通し稽古までの休憩時間に、この深遠な場に宿る精霊に誘われるかのように、媽祖堂の前で思いがけず楊先生が不老拳を舞われた時が、この大会最高の瞬間でした。

 講演会は、楊名時太極拳未開の地、長崎の太極拳を知らない人たちにも聞いていただきたいと、一般向けのチケットを準備しました。会員の草の根的な努力もあって、古いお寺の大広間の底が抜けそうなくらいたくさんの方々が詰めかけてくださいました。
 冷房もない座敷にすし詰め状態だったのですが、みなさん熱心に聴き入ってくださいました。楊先生、帯津先生のお話に感動の輪が広がりました。楊先生にうながされてお話くださった渋谷先生の美貌と若さの力も絶大で、翌週のお稽古には多くの人が初参加されました。

 祝賀会が次第にリラックスした雰囲気に包まれたのは楊先生の場を和ませるお力によるもの。魔法にかかったような濃密で楽しい時を過ごさせていただきました。佐藤師範の「この道」に続き、歌ってくださった台詞入りの「何日君再来」のメロディが今も心の中で繰り返し甦ってきます。

 7日の朝稽古は孔子廟で。とてもさわやかで、晴々しい演舞になりました。華僑の方々の特別参加、中国獅子舞。原色の派手な舞と爆竹のはじける音とともに、今回のイベントを華やかに締め括ることができました。 

 教室の人たちの目が輝いています。本物に接することでしか分からないことがあります。そのチャンスを作ることで大好きな太極拳に少しでも恩返しできたとしたらこれ以上の喜びはありません。楽しく、心豊かな時間を共に過ごせたこと、準備の段階から力を合わせてきた支部会員のみなさんを始め、参加してくださったすべての方々に心から感謝しています。

 最後に楊先生の言葉「私の大好きな太極拳、あなたの大好きな太極拳を多くの人に広めることで、戦争のない平和な世界を共に築いて行きましょう」。



●写真は、東京から駆けつけてくださった先生方と長谷川支部長。左前から右後ろへ、渋谷麻紗、楊名時、帯津良一、長谷川くみ子、土井てる子、佐藤伸子、市園禮子、小松崎貴枝、今井治(敬称略)。


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