アイゲリ!

コラム21
Twitter 2019年



●2月14日
アイルランド人と黒人と犬はお断りの貼り紙。長崎ではカトリック信者をクロと言って差別した。黒ん坊、ニガーと見下すのと同じだ。英米でアイルランド人はホワイト・ニガーと呼ばれた。俺は黒人だと言った白人ランボーの凄み。それを歌にしたパティ・スミスはロックがどこに立つべきかを教えてくれた。

- - - - - - -

●2月21日
ダブリン行き飛行機の待ち時間に仕掛けられたアイリッシュ・ダンス・ショー。90年代に長崎絵本セミナリヨで博多まで「リバーダンス」を観に行ったっけ。英国にファックされ続けた愛蘭土。貧困の中で音楽と踊りが彼らを生かし、米国に渡ってロックの源流のひとつになった。

【Irish Dancing Flashmob in Essex by Aer Lingus Regional and London Southend Airport】


『地獄の季節』で自分はゴール人の末裔だとランボーは書く。古代ローマ人はケルト人をゴールまたはガリアと呼んだ。小林秀雄は「悪胤(あくいん)」という小難しい題に訳したが、要するに悪い血統のこと。ケルト人は無教養でガラが悪いと昔から言われてきた。ロックンロールによる価値の逆転まではね。

- - - - - - -

●2月24日
日本時間の月曜朝にアカデミー賞授賞式。現クイーンの演奏もあるらしいね。「ボヘミアン・ラプソディ」はどうなるかな。96年のデ・ダナンにかかると「ボヘミアン・ラプソディ」がアイルランド音楽になってしまう。ロックの里帰りだね。アルバム・バージョンはホイッスル入り。

ホイッスル入りのアルバム・バージョン。ちなみに「Hibernian(ハイバーニアン)」はアイルランド人の、という意味。
【De Dannan - Hibernian Rhapsody】

- - - - - - -

●4月26日
初期ジョン・リー・フッカーのモダン原盤ベストの続編「ハウス・レント・ブギー」。英盤のジャケットはぼくが描いたみたいなイラストだ。ブルースは田舎でも都会でもパーティー音楽だった。シューヘーも東京時代に金持ちパーティーで演奏したことがある。媚びを売らないで場を演出する訓練だと思った。

ハウス・レント・パーティーは家賃稼ぎのパーティー。参加費500円ぐらいで音楽とご馳走で楽しく過ごして主催者を助ける。ブルースをブルーな表現と考えるのは思い違いだ。貧困や被差別の中にいるからこそ、それを忘れさせてくれる音楽を人は求める。恨み節や泣き言ではない。アイルランド音楽もそう。

- - - - - - -

●4月29日
アイルランド音楽のリズムに黒人が夢中だという記録がある。ジグのリズムはブルースのタッタ タッタというシャッフル・ビートに、リールはロックのタタタタ タタタタというエイト・ビートに発展する。ホイッスルでジグやリールを演って、ぼくはそれを体感した。これから描く絵本に生かすつもり(!)。

- - - - - - -

●6月22日
【今日のジョン・リー・フッカー】6月21日はジョン・リーの命日。最後のアルバム「ドント・ルック・バック」は美しい。自分は老いないし貧しくならないと思っていたあのころ、夢見るのはやめだ、過去を振り返らず未来を生きよう。アイルランド出身のヴァン・モリソンと歌う。

【John Lee Hooker & Van Morrison - Dont Look Back (Lyrics)】

- - - - - - -

●7月17日
【今日のジョン・リー・フッカー】たぶん60年代のワークショップ、フォーク愛好家たちのお勉強会だね。やれやれというジョン・リー・フッカーの背後にブルースの系図が書いてある。右上にリールとジグ。アイリッシュのノリがブルースに影響した。ちゃんとわかってたんだよ、あっちでは。

- - - - - - -

●10月03日
86年のBBC TV「幻の民ケルト」サウンドトラックを担当したエンヤのヒット、そして90年のエニグマ「サッドネス」のヒットが93年グレゴリオ聖歌の大ブレイクを誘発、カトリックとアイルランドのイメージが好転する。音楽による世界の変わり目を重視する日本人は今も少ない。

【Enigma - Sadeness - Part i】


歴史観を変えたBBC TVのドキュメンタリー番組の邦題は「幻の民ケルト」、ぼくもこれをたまたま観てケルト文化に興味を持ち始めたのだった。原題は「The Celts」。日本でアイルランド音楽が流行るのは90年代、カトリックのイメージを変えるところまでは行かなかったと思う。

【Enya - The Celts】


90年代のアイリッシュ・ブームのピークが「リバーダンス」だ。初のニューヨーク公演は衝撃的だった。プロテスタントの国アメリカでアイルランド出自を隠して生きていた人たちが次々とカミングアウトした。彼も? 彼女も…とぼくは目が回るような思いで見ていた。

【riverdance thunderstorm】


そしてトドメが映画「タイタニック」(97年)だった。
- - - - - - -

●11月3日
17日の下村誠追悼コンサートで演るこじこじ音楽団「猫ヒゲDance」の冒頭のリコーダーがうまく吹けない。スタジオではアルト、ライブではソプラニーノのF菅を吹いた。その後、ぼくはティン・ホイッスルに没頭した。試しにG菅のホイッスル(写真)を吹いてみたらベターだった。当日はこれで行こう。

- - - - - - -

●11月12日
ピストルズ再発見のきっかけになった『ギター・アンプの真実』(アキマツネオ)に出てきたんで、ロリー・ギャラガー「ブループリント」(73年)紙ジャケCDを中古盤で衝動買い。別ジャケは持ってるけど、やっぱこれだ。高校生のオレのヒーロー。ラグタイム・ギターやマンドリンもいい。アイルランド男。

- - - - - - -

●12月7日
先月、下村誠追悼コンサートのこじこじ音楽団。ぼくはリコーダーのパートをティン・ホイッスルで。ギターはラリーに借りたギブソン。エレキ・ギターの河口、ペダル・スチールの宮谷さん、ベースの美穂、キーボードのあっちゃん、ドラムスのしえん、ツワモノ揃いのバンドです。また演りたいっす。



コラム 目次へ戻る