アイゲリ!

コラム16
ブラックボックス ④
2009年11月13日



●わが国のすぐれた古楽演奏集団アントネッロによるCD「天正遣欧使節の音楽」(07年)が素晴らしい。広くお薦めしたい。繰り返し聴ける、いや聴くべきCDだと思う。

キリシタン時代のラテン・ヨーロッパの音楽と日本音楽の相互影響について、これまでの研究を飛躍的に押し進め、説得力のあるアレンジと演奏で聴かせてくれる。ルネサンスの流儀に乗せて歌われる日本民謡やわらべ歌の、居心地の良さそうなこと。「でんでらりゅう」もありまっせ。ぼくも元歌の可能性があると考えていたスペインの「ディンディリン」と関連づけられている。ケルトのリルティング説をぼくは捨てられないけどね。

少し前に聴いたサヴァールのザビエル伝より視点が低い。あちらは貴族的でこちらは庶民的。天正少年使節の演奏の再現はこれまでもされてきたが、歴史の欠落を想像力で埋めて、その先にあるものを見る、こういう柔軟な仕事を待っていた。解説に書かれている、歌謡曲はラテン・アメリカを通って日本の過去の記憶を呼び覚ますのではないかという指摘にはナルホドと思わされた。濱田さんがその角度から切り込むならぼくはこっちから行くよという覚悟ができそうで、なんだか爽快だ。ぼくはロックに繋げたいから。


コラム 目次へ戻る