はせがわくんきらいや 絵はがきセット

集平のデビュー作『はせがわくんきらいや』('76年)が、絵はがきになりました。全15画面+制作当時の集平の未公開ポートレイト1枚の16枚セットです。表面には薄い水色で切手の位置に哺乳瓶を、センターラインに絵本裏表紙の泣いてる長谷川君をデザインしました。
また、絵はがきになったことで、絵本では真ん中のノドに隠れていた部分も、原画そのままの形で見ることができます。
好きな人に1枚ずつ送ったり、セットのままバラさずに読み返したり。両手のひらにおさまる、小さな『はせがわくんきらいや』を楽しんでください。


集平のメッセージ  絵はがきに同封されています。

 前略。『はせがわくんきらいや』(1976年)が3度目の絶版状態にある中で、せめて内容だけでも伝えたい、極端に減った印税収入を少しでも補いたいと自主制作販売したのがこの絵はがきです。1999年4月のことでした。朝日新聞に取り上げられたとたん、切れ間ない注文の電話やファクシミリが何日も続き、うれしい悲鳴を上げると同時に、読者の求めているものと出版の求めているもののズレに複雑な思いを味わったものです。
 その後も、この絵はがきはシューヘー・ガレージの悲しい定番商品として売れ続けています。インターネットがなかったら『はせがわくんきらいや』は忘れられていたかもしれません。
 そのインターネットの復刊ドットコムでの集票がきっかけで、この度『はせがわくんきらいや』が復刊される運びになりました。三転び四起きです。もう転ばないことを望みます。絵本には書店や図書館や文庫やだれかの本棚で読者が気づいてくれるのをじっと待つ時間が必要なのです。今のせっかちな流通システムはその時間を奪っています。今回『はせがわくんきらいや』がこの流通システムを握っている日販系列のブッキングという出版社から復刊されるというのは、何かを暗示しているのかもしれません。

 復刊までの「つなぎ」のつもりで作った絵はがきですが、これからも販売を続けていくことにします。小さいけれど、九州言葉で言うと「ふとか」メッセージがこの絵葉書には込められています。
 画面の縦横比はオリジナルのままです。用紙と印刷インクは作者の意図を反映しています。周囲をぼかしたのは原画が損なわれていることから来る処理です。ノドの位置に画面順を示すナンバーを入れました。ギターを弾いている写真は、国分寺跡で武蔵美の同級生、藤井泰夫氏が撮ってくれた、執筆当時のぼくの幻のような姿です。

 前につけた解説の最後の部分が気に入っているので、ここに引用します。

 ……こういう事情なので、コピーをするよりも買い足してください。できれば、いっぱい買って、いっぱい使ってください。空しさばかりを蔓延させる「不幸の手紙」ではなくて、人をはげます言葉が、この絵はがきに書き込まれて遠くまで届きますように。

2003年7月長崎で
長谷川集平



 '99年6月7日付け朝日新聞夕刊(夕刊のない地区では6月8日の朝刊)の単眼複眼の欄に「『はせがわくんきらいや』絶版に対抗、絵はがきで復活」という記事が掲載されました。

 『はせがわくんきらいや』という衝撃的な絵本が作られたのは、今から24年前のこと。当時美術大学の学生だった絵本作家・長谷川集平が描き、第3回創作えほん新人賞と取った。これまで出版社を変えて復刻されてきたが、去年、ついに3度目の絶版に。長引く出版不況で復刊のめどは立っていない。(中略)
「カレー毒物混入事件でヒ素という言葉を久しぶりに聞き、ヒ素ミルク事件の被害者たちはいやな思いをしているのではないでしょうか。あの絵本のメッセージは、現代に通じるものだ、と改めて思った。ぜひ生かしておいてほしい本なんです」
 そこで長谷川さんは絵本を丸ごと一冊、15枚の絵はがきにした。
「印税収入を絶たれた窮余の策ですが、ミニ紙芝居として使ってもらってもいいし、この本が絶版ってどう思いますか、という問いかけにもしたかった」 (中略)
 売れるか、売れないか、だけですべての価値が決まってしまう時代。長谷川さんの絵はがきは、そんな世の中へのささやかな抵抗だ。(後略)


おかえりなさい『はせがわくんきらいや』復刊!

『はせがわくんきらいや』が、カバーや表紙、見返しの色も新装され、2003年7月20日にブッキングから出版されました! 温羅書房版が絶版になってから、ながいながい時間が経ちました。再び読者の手に届く日が来るなんて、こんなに嬉しいことはありません。ずっと待っていてくださった方々の声が聞こえてくるようです。ばんざーい!

北か南か東か西か、それは木枯らしの吹く寒い駅前か、潮騒の聞こえる陽射しの強い島かもしれない、どこかの本屋さんの店頭でぼくの想像もできないだれかが『はせがわくんきらいや』を、何の予備知識もないままふと手にしてくれる。本当は本はそうじゃなきゃいけないんですけれど、その機会をずっと失っていました。また『はせがわくんきらいや』があちこちで語り始めるのです。うれしいです。──集平



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