ラ・メールと3原色とグレイスランド

長谷川集平


「ラ・メール(海)」はシャルル・トレネ作のシャンソン。フランス語の海は女性名詞です。この歌を覚えるのは難しい。ぼくみたいに、はじめのメロディの繰り返しになっちゃうかもしれません。それでもいいから、ぜひ「ラ・メール」を口笛で吹いてみてください。
 絵は水彩の青・黄・赤、3色だけで描きました。青は父さん、黄は母さん、赤は子…赤ちゃんですからね。どんな人にも父と母がいる。今はいなくてもです。青と黄を混ぜると緑ができます。でもそれは青と黄の間の緑だけです。そこに赤がもたらされて3原色がそろうとほとんどすべての色が作れる。素敵ですね。
 ポール・サイモンは「グレイスランド」という歌を作りながら、「自分は船長ではなく乗客だった」ことに気づいたと語っています。グレイスランドはメンフィスにあるエルビス・プレスリーの邸宅。このロックンロールの聖地巡礼の旅に出る男と9歳の息子。歌はやがてそのもっと先にあるグレイスランド(恩寵の地)に針路をとり始めます。
 ぼくらの乗ったこの船はどこに向かっているのでしょうか。

『大きな大きな船』カバーそでより




ポプラ社・本の詳細←立ち読みできます

2009年10月6日長崎新聞記事

2009年「THEながさき」掲載記事


「この絵本が好き!〈2010年版〉」に掲載

絵本好き108名のアンケートによる、2009年のベスト絵本が紹介されたガイドブック「この絵本が好き!〈2010年版〉」。「国内絵本ベスト13」の6位に『大きな大きな船』がランクインしました。

●「この絵本が好き!〈2010年版〉」別冊太陽編集部(平凡社)2010年3月発売・1,200円







「シューヘー通信」57号('09年7月発行)
『大きな大きな船』出版記念インタビューより抜粋

見返しはダミーの段階では大きな船の絵だった。



'09年6月15日 シューヘー・ガレージで
集平=長谷川集平/Guitar Vocal
クン=クン・チャン/Cello Vocal

こちらが採用されたボートの絵。ただし絵本ではネガ版です。



集平 ……不思議なことがまだあった。見返しの色を考えてたら、わすれなぐさ色というのが色見本にあった。勿忘草は母の好きな花だったな、これで行こうとその色に決めたあと、本屋で『日本の伝統色』というガイドブックを見たら「聖母の衣の色」とある。鳥肌が立ったよ。この絵本は聖母の衣を着せてもらった。ご褒美をもらった気がしたよ。

浦山桐郎監督「キューポラのある街」('62)のボート。

 見返しに描いたボートにも驚いたね。これも描いたあとの話で、クンの太極拳教室の生徒の孝行さんという鉄工所を経営してる人が、不況で来られなくなったというんで応援がてら「キューポラのある街」をダビングして送ることにした。 というのも「キューポラ〜」の主人公の弟もタカユキで、前から孝行さんの名前を呼ぶ時イメージがダブってたとクンが言うんでね。それで久しぶりに観てたら、タカユキと在日朝鮮人のサンキチが鉄工所(!)のボートに乗って逃げるシーンがあって、それがこの見返しの絵と波の立ち方までそっくり。知らずのうちにあのシーンを描いてたんだ。

ユリー・シュルヴィッツ『よあけ』福音館書店('74)のボート。

クン 見返しの船はまず絵本の中に入ってって、うしろの見返しで絵本の外に漕ぎ出してる。そういうふうになってんでしょ。
集平 そうっス。『はせがわくんきらいや』も最後はどこかに向かって歩いてるところで終わる。
 シュルヴィッツの絵本『よあけ』もボートのイメージとしてあった。ぼくはフリクションの多い物語を書くけれど、いつかは『よあけ』や、谷内こうたさんの『のらいぬ』のような静かなところに行き着きたいと思ってるんだ。表紙は描いたあとに『のらいぬ』の灯台の上に少年と犬が立ってる絵と似てると思った。
クン そうだね。
集平 ぼく高所恐怖症だからこういう絵描く時恐い……つづく

『大きな大きな船』の表紙の絵は、谷内こうた『のらいぬ』
至光社('73)の灯台のシーン(↓)を向こうから見てる構図に
きわめて近い。これも描いたあとに気づいたこと。若い時に
見たものがこうして変貌して表れることがあるんですね。



(全部読みたい人はバックナンバー「シューヘー通信」57号を申し込んでね



通販カタログ絵本ページ